Silver lining

ハンググライダーのフライトログ

 
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そのロガーは何の高度を記録しているのか? QNE と QNH

前回の距離の話につづいて、またまたニッチな話題。
今回は高度について。

昨今はフライトログをとるツールとしていろんな選択肢があります。GPSバリオだったり、Koboだったり、スマートフォンだったり。

ログの形式にはいろいろなものがありますが、ここではグライダー界標準の IGC フォーマットでログを取れる機器に話を絞ります。

所謂「高度」にはGPSで取得される高度(以下GPS高度)と、気圧センサーで測定される気圧を高度に換算された値(以下気圧高度)がありますが、フライトのログとしては、どちらかの高度を目的に応じて使い分ける場合があります。
具体的には、公式な記録飛行を行う場合、またCIVL公認の大会でフライトの証明としてログを使う場合です。
ここ何年かはGPS高度を高度の記録として使う事が多かったのですが、最近 CIVL の規定の変更により、気圧高度を使用することに変更されました。
メキシコとマケドニアの世界選手権/ユーロに参加したパイロットはご存知のように、このルール変更により Garmin の GPS は気圧高度をログに残さない仕様が要件に合わず使用不可となりました。
大会で高度の精度が求められるようになった理由は主に制限空域への進入の判定と、パラのワールドカップ等で一時期円錐型のゴールシリンダーが採用されたことによると思われます。
最近のGPSは静止しているときの高度方向の精度もかなり良くなっています※が、移動中はまだかなりばらつきが出るため、厳密な高度判定をするには十分ではないと判断されたようです。この辺の議論は paraglidingforum.com のどこかのスレッドにありました。
※ GPS高度にもジオイド高度と楕円面高度の違いがあったりして面白いのですが、今回の話のメインは気圧高度なので割愛。

現在はこのルールはカテゴリー1の大会のみ適用ですが、各国の競技委員会が自国のカテゴリー2の大会に同じルールを適用する場合があるかもしれないので、特に海外の大会に参加するパイロットは注意が必要です。

では、気圧高度も測定できるGPSであればどれでも一緒、、、ではないかもしれない、というのが今日の話のポイントです。
6030 / Compeo+ を例にとってみます。
去年の私のログの1つから適当に拾って、テイクオフ前のデータを抜き出します。

B1026155050035N00004931EA0011600168000

この読み方についてはここでは解説しませんが、後半の"A"の後

0011600168

の部分が気圧高度/GPS高度(各5桁)を示しています。
これは Firle というエリアのテイクオフですが、海抜高度165mです。
(以前にこのエリアについて書いたことがありますが、低いけど良いエリアです。
ちなみにこのログを取ったフライトは125kmのアウトアンドリターンしています。)
GPS高度は168mと3mの誤差に収まっていますが、気圧高度は116mとなっています。
私はフライト前に気圧高度を必ずテイクオフ高度に合わせます。この日も165mに合わせています。
それにも関わらず、私のCompeo+は実際よりも50m低い高度を記録しています。
これはバリオのファームウェアが壊れているわけではなく、Flytec/Brauniger はQNEを記録するのが仕様なのです。
QNEは 1013.25 hpa 気温15度の標準大気を高度0mと設定したときの高度で、航空管制、とくに高高度の管制で用いられます。ログを標準大気内で記録すると、気圧高度は実際の高度と同一になりますが、現実の大気がに標準大気一致することは稀な訳で、高気圧下ではある地点のQNEは下がり、低気圧下ではQNEは上昇します。
上のログは気圧高度の方がGPS高度よりも低い、つまり 当日はフライトエリアは高気圧の圏内だったことが分かります。
そして大事なポイントは、QNEをログに記録するバリオでは、「自分がフライト中に見る高度とログに残る高度は異なる」ということです。

一方で実際のテイクオフ海抜高度に較正した数値をQNH と呼びます。
QNHは気圧の変動と共に変化していくので、航空管制では割と頻繁にQNHがアップデートされます。
アップデートは下の例のように METAR の中の情報として更新されます。

METAR: RJAA 142100Z 35019KT 8000 -SHRA FEW006 BKN008 BKN012 03/02 Q1004 TEMPO 4000 SHRA BR RMK 1ST006 5ST008 6CU012 A2965

台風が近かったりすると短時間でQNHがかなり変化しますが、通常我々がフライトする時間とエリアのスケールではほぼ一定とみなせる場合が殆どなので、誤差の観点からはトラックログに QNH を記録しても大きな問題になることはありません。
寧ろ自分がフライト中に確認した高度がそのまま記録されるので混乱が少ないとも言えます。

また、QNE のログを元に制限空域のチェックを行う場合には、実際にフライトしていたエリア、時間帯の QNH が必要になります

では実際我々が使っているロガーは QNH と QNE のどっちを記録しているんでしょうか?
ざっと情報を集めてみた限りでは Oudieシリーズ, Compas C Pilot Pro は Flytec と同じく QNE、Aircotec XC Trainer、Digifly Leonardo は QNH、Flymaster? Digifly Air?
他には XC Tracer など自分でディスプレイを持っていないタイプのロガーはQNHを取得出来ないのでQNEを記録しているはずです。ただし、古いモデル/ファームウェアだとそもそもGPS高度しか記録していない可能性もあります。気圧センサー内蔵スマートフォンやタブレットをロガーとして使用したい場合も同様です。例えば SeeYou Recorder は ver 1.39 (記事を書いている時点で ver 1.41)でようやく気圧高度を記録するようになりました。

これからカテゴリー1の大会でフライトするパイロットは、QNHをいくつに設定するのか、自分のロガーがどちらの数値を記録しているのか、スコアリングプログラムはQNHかQNEなのかを認識できるのか、など判定基準や方法をきちんと把握して思いがけぬペナルティーを与えられないように知識を深めておくことが求められますよ、という話でした。

なお、現状ではCIVLではまだ問題になっていませんが、気圧センサーは経時的に誤差がでるので本来は定期的にキャリブレーションが必要です。グライダー競技では5年以内にキャリブレーションを行っていない機器で取得したログにはペナルティーがあるという話もどこかで目にしました。実際QNEを記録するということは気圧の絶対値を記録するのに等しいので、それが機器によってぶれていたら公平であることの前提が崩れるので、これも近いうちにCIVLで議論される可能性は高いと見ています。GPS高度だとそこは考える必要がないので、あちらを立てればこちらが立たず、というか、いたちごっこというか、いつまでも問題が尽きないですね。









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